遺言書作成で注意したい6つのポイント

税理士コラム:税 相続 遺言書

相続の際に作成する「遺言書」は、何でも良いのでとりあえず書いておけば良いというものではありません。

遺言書を作成するには決まったルールがあり、例外を認めてくれませんので注意が必要です。

また、遺言書は非常にデリケートな内容を書き留めるため、遺言書そのものの真偽に疑いが生じることを避ける工夫も必要になります。

作成する遺言書が、ただの紙切れにならないために遺言書作成の際に注意したい6つのポイントを紹介します。

1:「手書き」であること

紙とペンがあれば誰でもすぐに遺言書を作成することができ、全文を自分で書く遺言のことを自筆証書遺言と言います。

遺言書に関しては、民法968条にて次のように定められています。

民法968条:「遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」

条文にあるように「自書」ですので、他人に書いてもらったっりパソコンを使って書いたものは「遺言書」にはならないのです。

疑念が生じないようにする工夫としては、ボールペンか万年筆を使うことです。鉛筆では、誰かが消しゴムで消して書き直すこともできてしまいます。

2:「日付」を入れること

遺言書を書き上げた日付を入れてください。平成という元号でも西暦でも構いませんので、何月何日とはっきり書きましょう。「吉日」といった文言は使わないでください。

民法968条に「日付」とあるのは、遺言書を書いた日を「この日」と特定させる趣旨です。遺言書は、何度も書き直せるものです。人によっては、複数見つかるケースもあります。複数の遺言書が見つかると、日付の新しいものが優先されます。

3:文言の追加・削除の際には書き直しが安全

民法968条には、もう一つ大事なことが書かれています。

「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」

こちらは契約書に文言を追加したり、削除したりする際の方式と同じですので、ビジネスにおいて契約書作成に携わってこられた方は読んでなるほどと納得されるかもしれません。

しかし、契約書の作成業務に携わっていない方は、少しでも間違えると直した部分が無効になってしまいますので、もう一度書き直して新しい遺言書を作る方法をおすすめします。その方が間違いの無い遺言書になります。上述の「日付」のところでも触れましたが、書き直しを行うことも考慮して、「遺言書を書き上げた日付」はきちんと書いておきましょう。

4:「一通一人」の決まり

遺言書は一通一人という決まりがあります(民法975条「二人以上の者が同一の証書ですることができない。」)。

一つの遺言書にご夫婦で署名押印などしてしまうと、完全に無効な遺言書となります。一通の遺言書に署名押印できるのは、一人だけです。

「一人一通」と言う方が自然な気がしますが、一人で二通ということもOKなので、「一通一人」という表現がされます。どういうことかと言いますと、一通目は自宅不動産について、二通目は預貯金についてというように何通作っても構わないのです。一通に二人以上が署名押印すると無効になりますのでご注意ください。

5:書いても実現できないことがあります

遺言書は万能ではありません。遺言書に書いても、実現できないことがありますので注意が必要です。

例えば相続人が複数おられる場合、その中のお一人に全ての財産を相続させ、他の相続人の相続分をゼロにするというような内容であっても、遺言書を読んだ相続人次第で相続が行われることになります。

なぜなら相続人には遺留分と言われる権利があるからで、法定相続分の半分は、少なくとも自分のものだと主張することができるのです。

その遺留分を主張するかどうかは相続人次第なので、遺言書通りとなる保証はありません。

6:絶対に書いておくべき付言

「書いても実現できないこと」で記述したように、相続人の一人に財産を相続させたいような場合、遺留分を主張されるとその想いは遂げられません。

しかし、遺言者の想いを理解してもらう方法もあります。例えば妻と子にあてた遺言書を書く場合に、妻の当面の生活と今後の妻の医療費を優先させたいという考えをお持ちの場合を見てみます。

女性は男性よりも長生きする傾向があり、施設費や医療費の負担も大きくなる可能性があります。財産を妻一人に相続させたいと考えているならば、まず財産を全て書き出し明確にします。書き出した財産に漏れがある場合に備え、「その他一切の財産は妻に相続させる」とします。

ここで終わってしまうと、子どもたちから遺留分を主張される可能性が高いので、「付言(「ふげん」、内容的には法的な効力はありません)」と呼ばれる内容を付け加えます。

「お母さんの今後の生活や医療費・施設入居の費用として、財産を残す決断をしました。愛する子どもたちに財産を残してやることができなくて、本当に申し訳なく思っています。お母さんの生活を支えるため、子どもたちも協力してください。子どもたちはお母さんを見送った後に、財産を仲良く分けてください」というような言葉を添えることで、想いが伝わることもあります。

財産を書き出して明確にすることで透明性を持たせ、更に情に訴える文言を重ねることも大切です。


遺言書はルールから逸れてしまうと、ただの紙切れとなってしまいます。万が一の事態を迎えたとき、自分の代わりを遺言書に勤めてもらう必要があるので、効果的な書き方を理解しておく必要があります。遺言書の作成を考えている方は、6つのポイントを参考にしてみてください。

遺言書の作成に不安をお持ちの方や、専門家としっかりと相談しながら相続を行いたいとお考えの方は、どうぞタックスナイトまでご相談くださいませ。相続に詳しい税理士をご紹介させていただきます。

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