日本人の平均寿命は延びており、世界に類を見ない超高齢社会となっています。親が90歳を超える年齢になり、その親を介護する子どもが70歳近いという「老老介護」現象も問題となっています。
このような状況にある中で、国が考えた施策の一つに「相続時精算課税制度」というものがあります。
こちらの制度は、親から子・孫への財産の移動を速やかにする目的の為に作られたものです。
この「相続時精算課税制度」を理解するための5つのポイントをご紹介します。
1:2,500万円までの生前贈与が非課税
「相続時精算課税制度」が適用されると、2,500万円までは生前贈与の際に非課税となります。
実際に相続が発生した場合には、生前贈与の分を相続財産に組み戻して相続税の計算を行いますが、それでも納めるべき相続税がゼロとなる場合には、最終的に納税額はゼロということになります。
「相続時精算課税制度」を活用することで、相続発生よりもずっと早く資産を次の世代に譲り渡すことが可能となります。
2:2,500万円を超えた場合の課税率
「相続時精算課税制度」を利用した生前贈与の額が2,500万円を超える場合、その超えた部分に対して一律に20%課税されます。
例えば3,000万円を贈与したとすると、2,500万円を超える500万円に対して20%課税されますので、100万円を納付しなければなりません。
そして相続が発生した際に、生前贈与分3,000万円を相続財産に組み戻して相続税の計算を行い、納めるべき相続税がゼロとなるならば、従前に収めた100万円は還付となります。
納めるべき相続税が300万円という計算になるのであれば、既に100万円を納めていますから、残りの200万円を新たに納付すれば良いということになります。
3:収益物件の生前贈与
家賃収入が年間2,400万円ある賃貸マンションを「相続時精算課税制度」を利用し、親から子に生前贈与する場合を見てみます。生前贈与時点での評価額は2億円とします。
この場合は、1.75億円に対して20%課税されますから、3,500万円を納税することになります。
その後、生前贈与から10年経過して相続が発生したとします。相続税は4,800万円だったとしましょう。
そのうち3,500万円は既に納付済みという扱いになりますから、残り1,300万円を納めることになります。
ここで実は大きなポイントがあるのです。それは家賃収入です。10年間の家賃収入2.4億円は譲り受けた子どものものです。もし「相続時精算課税制度」を使わなければその2.4億円に対しても課税された可能性があるのです。
4:相続時の評価額は生前贈与の時の金額
上述した、「収益物件の生前贈与」の例で確認しますと、生前贈与時点でのマンションの評価額は2億円です。10年後の相続時には、生前贈与した時の2億円で計算しなければなりません。当該賃貸マンションが10年後に1.5億円と評価されているかもしれませんが、「相続時精算課税制度」を使うとなると、あくまで贈与時の2億円なのです。
そこで大規模修繕や、付加価値を付けて賃貸マンションの価値を上げるような工夫は贈与前には行わず、すべて贈与後に行うようにすることが考えられます。
しかし、大幅に値下がりが見込まれるような不動産や権利については、「相続時精算課税制度」を有効に使うメリットはないかもしれません。
5.孫への贈与にも有効
先祖代々受け継いできた土地を、直系の孫に相続させたいという場合に「相続時精算課税制度」を有効に使うことができます。自分の子どもに相続させる通常の方法では、場合によって子どもの配偶者一族に土地の権利が移転してしまう可能性があるからです。どうしても、先祖代々の土地を直系の子孫に受け継がせたいというようなケースでは、非常に有効な制度です。
このようなケースでは信託を利用することも考えられますが、意外とその仕組みや義務が大変です。「相続時精算課税制度」で孫に生前贈与する場合、相続税が2割加算となりますが、これは信託を利用しても同じ結果です。
このように考えると、直系の子孫に財産を受け継がせたいという想いを確実に実現できる制度としても、「相続時精算課税制度」は活用できるのです。
資産価値が下がりそうでも、生み出される収益との兼ね合いで「相続時精算課税制度」の利用を検討する価値は十分あるかと思いますので、実施する際には申告手続きが必要となったり、二次相続のことも考慮して進めることが大切ですので、検討されている方は相続に強い税理士と相談しながら進めることをおすすめします。
相続時精算課税制度の適用をお考えの方や、相続対策の相談が必要だとお思いの方は、どうぞ税理士紹介タックスナイトまでご連絡くださいませ。相続に強い税理士をご紹介させていただきます。