遺産分割協議どんなもの
遺産分割協議とは、複数人で相続した財産の分け方を決める話し合いのことです。
ある人が死亡した場合、その亡くなった人の財産(遺産)を親族などの相続人が引き継ぎます。これを「相続」といいます(民法882条・896条)。
相続人が一人の場合は単独で相続すればいいのですが、相続人が複数いる場合には、相続財産は原則として共同相続、つまり共有となります(898条)。
この共同相続となった財産が誰へどのように分けられるかについては、いくつかの方法があります。
第一に、遺言による指定がある場合は、遺言通りに分ける「指定分割」という方法です(902条・908条)。
第二に、遺言による指定がない場合は、民法に定められた分け方としての「法定相続分」(900条・901条)に従うという方法です。
第三に、遺言による指定がない場合や、遺言があっても具体的な分け方が定まらない場合は、話し合い(協議)によって決める必要があります。この方法を「協議分割」といい、話し合いを「遺産分割協議」というのです(907条1項)。
なお、協議によっても分け方が決まらない場合や、そもそも協議自体が成立しない場合は、家庭裁判所による分割が行われます。これを「審判分割」といいます(907条2項)。
遺産分割協議の方法と成立要件
遺産分割協議を行う方法としては、次の2つがあります。
第一に、日時や場所を予め定めた上で、相続人全員が集まって協議を行うというもの。
第二に、分割方法を事前に決めておき、それを郵送やメール、FAXなどを用いて相続人全員に伝え、合意を得るというもの。
いずれの方法も、何か定まった形式があるというわけではありませんし、いつまでに協議をしなければならないという期限があるわけでもありません。
遺産分割協議の成立要件は、「相続人全員の合意」と「重要な遺産が協議対象から漏れていないこと」、そして「隠れた遺言が存在しないこと」です。
まず、遺産分割は相続人全員を対象とするものですから、相続人なのに協議に加わっていない者がいた場合、その遺産分割協議は無効となります。
加えて協議内容に反対する相続人が一人でもいた場合には、やはり無効となります。
また、遺産分割に相続人以外の者が加わっていた場合も、その分割は無効です。
次に、分割の協議の対象から重要な遺産が漏れていた場合は、その遺産の存在を知っていたなら分割の仕方が変わると考えられるため、公正の観点から分割協議は無効となります。
ただし、協議の対象となっていなかった遺産が重要とまではいえないものだった場合は、遺産分割協議自体を無効とするのではなく、残りの遺産について改めて分割すれば足ります。
さらに、遺産分割協議を済ませた後で遺言が発見された、というような場合は、遺言の内容によっては協議が無効となります。すなわち、遺言で遺産の全てを渡すことにしていたとき(遺贈)や、ある相続人に特定の財産を渡す内容が記されていたとき(特定遺贈)などには、分割協議の対象となる遺産自体が存在しないことになるので、協議は無効となるのです。
遺産分割協議に関するよくある質問
①遺産分割協議に加わる当事者は?
遺産分割協議には相続人全員の合意が必要となりますが、協議に参加できる当事者には、相続人全員だけではなく、以下の者が含まれます。
・相続人の法定代理人 | 未成年者が相続人だった場合の親権者(818条・824条)など。 |
・相続人の特別代理人 | 未成年者の親権者も相続人であれば、利益が相反する可能性があるため、特別代理人(826条1項)の選任が必要となります。 |
・相続人の後見人 | 相続人に判断能力がない場合の成年被後見人(843条・859条)など。 |
・相続分譲受人(905条) | 相続人から相続分を譲り受けた者を相続分譲受人といい、協議に加わることが可能です。ただし、参加必須ではありません。 |
・包括受遺者(990条) | 遺贈される財産を特定しないで割合のみ示すことを「包括遺贈」といい、それを受けた者を包括受遺者といいます。 |
・遺言執行者(1012条以下) | 遺言がある場合、遺言の内容を実現するために選任された者を遺言執行者といいます。 |
②遺言がある場合、その内容を無視して遺産分割協議をしても良いか?
これについては、裁判例(東京地裁平13.6.28・さいたま地裁平14.2.7)で、遺言を無視した遺産分割協議も、受遺者も含む全ての相続人の同意があれば有効と解されています
その理由は、遺言自体が、遺産を巡る関係者の争いを防止するためになされるものであるところ、全ての相続人の同意があれば争いは生じないからです。遺言執行者がいる場合も、遺言執行者を含めて全ての相続人の同意があれば、やはり遺言内容と異なる遺産分割協議は有効となると考えられます。
③遺産分割協議書は作る必要がある?
遺産分割協議を行った場合、それを書面にしなければならないでしょうか。
遺産分割協議書がなくとも協議そのものは有効に成立します。しかし、書面がなければ決まった内容を証明する手立てがなくなってしまいますし、相続の手続きには遺産分割協議書の提出が求められますので、基本的には作成すべきです。
遺産分割協議は、相続人全員で遺産分配に関する話し合いを行うものです。中には遺産が不動産のみというケースもありますので、円満に話し合いが進まないということは少なくありません。
専門家と相談しながら遺産分割協議に臨みたいとお思いの方は、どうぞ税理士紹介タックスナイトまでお問い合わせください。相続に強い税理士をご紹介させていただきます。