後継者のための経営環境作り
事業承継において、最も大事なことは承継する後継者の存在ではありません。最重要ポイントは、後を継ぎたいと思ってもらえる経営環境作りです。魅力ある経営環境が整えば、誰でも後を継ぎたいと立候補してくるのです。
「そんなことを言われても、うちの会社にそんな魅力があるはずがない」と思われる経営者の方が、実はとても多いのも現実です。冒頭にご紹介したケースも、まさにそのような代表例の一つです。会社の価値といえるほど、自慢できるレベルのものはない等と消極的になる必要はありません。営業ノウハウであったり得意先との人脈だったり、”目に見えない”知的資産が会社の大きな財産(価値)にもなり得るのです。
会社の価値というものを再確認できれば、社内の士気も高まります。士気が高まれば、生産性・効率性も上がり、営業成果も向上するという効果も発揮します。
そして、経営権が分散しているならば、可能な限り「社長」に集中させましょう。そして社長に集中した経営権を後継者に引き継げる態勢を整えるのです。後継者に対立するような仕組みにならないようにするのです。
また、キャッシュフロー経営体質を整えましょう。キャッシュフローを重視することが、経営を引き継ぐ上で大きな安心材料になります。今までそのような経営体質でなかったという場合には、大変苦労されるかもしれません。とりあえず銀行から借りて…、というやり方に慣れてしまっていると、真逆の発想ですから一番時間がかかる点になってしまいます。
このような経営環境作りを進めていくためには、やはり時間が必要だとお分かりいただけるでしょう。5年、10年という長期の計画の中で、あわてずに着実に進めていくことがポイントになります。
それだけの時間をかけてでも事業承継をする必要があるのかというと、それは最初に確認した会社の価値(企業価値)を守るということになります。だからこそ、最初に会社(企業)の価値をしっかりと確認しておくことが重要です。