相続:失敗例・贈与が認められなかったケース

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相続税対策として最も典型的なものは贈与です。一定程度の資産を持っている人であれば、贈与を利用した相続税対策について一度は考えたことがあるでしょう。それは贈与を利用した対策は簡単に行うことができ、それなりに大きな効果があるためです。

贈与による相続税対策は、1人に対して年間110万円までの額の贈与については贈与税がかからないという点を利用して行います。しかし、贈与を利用した相続税対策には、簡単であるがゆえに見落としがちな落とし穴が存在します。以下では、典型的な贈与を利用した相続税対策の事例を用いて、失敗例についてみていきましょう。

贈与が認められなかった事例

Aさんは50歳であり、現時点で2億円の現金資産を有している。Aさんには、妻のBさんと一人息子のCさんがいる。Aさんは自分の死後に、BさんとCさんが支払う相続税をなるべく小さな額にしたいと考え、贈与を利用した相続税対策を行うことにした。具体的には今から30年かけて、BさんとCさんに対してそれぞれ毎年110万円ずつ贈与を行い、Aさんが死んだ時点における相続財産を小さくしようと考えたのである。

はじめに上記事例におけるAさんの目論見について解説します。Aさんが何らの相続税対策をとらずに、相続財産2億円を残して死んだ場合、正味の相続財産2億円から4200万円(3000万円+600万円×法定相続人の数)を控除した1億5800万円が課税遺産総額となります。そして、この遺産はBさんとCさんで2分の1ずつ受け取ることになるため、BさんとCさんはそれぞれ2370万円(1億5800万円÷2×0.3)の相続税を支払う必要があります。

しかし、Aさんが毎年BさんとCさんに対してそれぞれ110万円ずつ贈与を行い、それを30年続けることができると、Aさんが遺す相続財産は1億3400万円となります。その結果、BさんとCさんがそれぞれ支払う相続税は、920万円となります。Aさんが相続税対策をしなかった場合と比較し、1450万円も相続税を安く済ませることができるのです。

このように贈与を利用した相続税対策は簡単に大きな効果を発揮します。しかし、贈与を用いた相続税対策には大きな落とし穴が存在します。それは、本人は贈与をしていたつもりだったが、税務調査により贈与と認められなかったというものです。つまり、贈与はなかったものとみなされるのですから、上記事例の場合、BさんとCさんは2370万円の相続税を支払うことになるのです。Aさんが30年かけてコツコツと繰り返してきた贈与が、税務調査においては贈与として認められないケースがあるのです。それは以下のようなケースです。

・親が財産を子供名義の口座に移したが、財産の管理自体は実質的に親が行っていた場合
・子供名義の銀行口座の取引印が親の印鑑である場合
・贈与契約書がなく、贈与の実態を証明することができない場合
・相続税を逃れるための贈与であることが明白な場合

このように形式的には贈与がなされていても、贈与された資産について贈与された側の人が自由に利用することができないような場合は、実質的には贈与が行われていないとみなされてしまいます。相続税対策として現金を贈与を利用する場合は、
①贈与契約書を作成し、
②銀行振込で支払い、
③贈与された側がその現金を管理する
ことに注意してください。


間違った認識で贈与を行うことのないよう、専門家と相談されることをおすすめします。相談が必要だとお思いの方は、相続に強い税理士をご紹介いたしますので税理士紹介タックスナイトまでどうぞご相談ください。

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