具体的にどのような場合に寄与分が認められているのかいないのか、裁判例で確認してみたいと思います。
寄与分が認められた判例
寄与分が認められた判例① (大阪家審平19.2.8)
被相続人を施設に入所させず、3年間ずっとめんどうをみてきた子どもに寄与分が認められました。親の食事や排せつの世話を3年間してきたので、上記要件の①②は満たしていると、直ぐに分かっていただけるでしょう。
問題の③については、支払わずに済んだ施設入所費用分が財産の維持と認められたのです。
寄与分が認められた判例② (東京高裁決平22.2.13)
相続人の妻が長年に渡って被相続人(故人)の世話をしてきたのは、「同居の親族の扶養義務の範囲を超え,相続財産の維持に貢献した側面があると評価することが相当」としました。これは上記の①③を満たすという内容です。
しかし、②の「身分性」が問題となります。なぜなら、お世話をしてきたのは相続人ではなく、相続人の妻だからです。しかし、裁判所は粋な論理構成を認めます。「相続人の履行補助者として相続財産の維持に貢献したものと評価でき」として、相続人の妻ではなく、相続人の寄与分として認定したのです。そこまで認定しておきながら、10年を超える寄与分として裁判所が認めた金額は、200万円です。
寄与分を認めなかった判例 (大阪家裁審平19.2.26)
被相続人(故人)の財産を、相続人の一人が株や投資信託で運用して増加させました。これを寄与分として認めるのかが争われたのですが、「株式、投資信託による資産運用は利益の可能性とともに常に損失のリスクを伴うことから、単に株価が偶然上昇した時期を捉えて被相続人の保有株式を売却した行為のみで特別の寄与と評価するには値しない」と上記の①を否定しました。
寄与分を認めてもらうための3つの要件をクリアーすれば、他の相続人よりも多くの遺産を手にすることが可能となります。しかし多くの遺産を余計にもらうことは、裁判例からみても難しいようです。また、相続開始後に寄与分を主張するのがよいのか、生前に対策はないのか等、専門家にご相談されることをお薦めします。ご相談が必要だとお思いの方は、税理士紹介タックスナイトまでご相談ください。相続に強い税理士をご紹介させていただきます。