知的障がい・精神障がい・認知症などの精神的な障がいによって、十分な判断能力に欠ける方の身上保護(身上監護)と財産管理を行うのが、成年後見制度です。
ご本人(被後見人)の自己決定権を尊重しつつ、残存能力を活用することが求められています。
成年後見人制度という名称ですが、その中身には「後見人」・「保佐人」・「補助人」というように分かれています。これはご本人(被後見人)の方の状況次第で、成年後見人も役割に多少差があると理解すれば十分でしょう。
金融機関や介護施設に、成年後見人を立てて欲しいと要望されることも最近は増えてきました。そのような時のために、成年後見制度を理解するポイントを4つ紹介します。
①身上保護(身上監護)と財産管理
身上保護(身上監護)とは、ご本人(被後見人)のために法律行為をすることをいいます。介護や病院の付き添い、買い物のお手伝い等は含まれません。ただし成年後見人がそのようなお手伝いをすることはありますが、成年後見人としてではなく、一私人としての行為になります。
成年後見人は、どのような法律行為をするのかというと、次のようなものが代表的な例として、理解しやすいでしょう。
・施設入所手続
・入院手続
・各種契約締結と解約
もう一つの大きな役割が、財産管理になります。
ご本人(被後見人)のすべての財産を管理し、ご本人(被後見人)のためにそれを活用し、必要に応じて処分することにもなります。あくまでも、ご本人の利益になる支出しか行わないことが鉄則です。したがって寄付行為などは余程の事情がない限り、原則することはできません。
また、遺産分割協議においてはご本人(被後見人)の利益のため、法定相続分を主張することになりますし、場合によっては遺留分を確保することになります。他の相続人の皆さんが、遺産を長男にすべて相続させようとしても、例えば次男の成年後見人としては、それに同意することは難しいと言わざるを得ません。
②誰が成年後見人となるのか
配偶者や子など身内の方や、職業後見人(弁護士・司法書士・社会福祉士)を候補者とすることも可能です。
その他に市民後見人(行政書士、市民)という選択肢もあります。候補者がいない場合は、裁判所にお願いして選任してもらうこともできます。
職業後見人が就任した場合は、その報酬支払が前提となります。身内の方や市民後見人が就任しても報酬を請求することは可能です。その報酬がいくらになるのかは、ご本人(被後見人)の財産状況と成年後見人の貢献度によって、裁判所が判断することになります。職業後見人の場合、月額相当額が3万円前後というのが相場です。
③成年後見人は絶対に信頼できるのか
信頼できる存在であるべきですが、時に事件としてマスコミに報道されるのも事実です。
それは、ご本人(被後見人)の財産の使い込みというものです。成年後見制度ができた頃は、身内の方が就任することが多く、身内の方の不正件数が非常に多かったという事実があります。
現在は職業後見人が就任する件数が非常に増えましたが、ときに不正を働く専門家がいるのもまた事実です。ただし、不正を働く成年後見人は必ずばれます。なぜなら少なくとも年一回は、裁判所に財産管理の報告をしなければならない義務があるからです。
④任意後見人について
知的障がい・精神障がい・認知症などの精神的な障がいによって、正常な判断能力に問題が起こったときには、裁判所に申し立てをして、法定後見人を選任してもらいます。
それに対して、正常な判断能力に問題が無い時点で、信頼のできる人に、もしもの時は成年後見人になって欲しいと契約をしておくこともできるのです。問題の無いときに契約をしますので、後見人として何をしてもらうのかという内容を、ぜんぶ一覧にしておきます。後見人に就任したら、そのリストにあることをご本人のために行います。これが任意後見人です。
一般的には、元気な間の見守り契約や財産管理契約をも事前に結んでおいて、いざご本人の状況が思わしくなくなったら、裁判所に後見人就任を認めてもらうという段取りが一般的です。亡くなってしまった後のことについても、死後事務委任契約を結んでおくと、任意後見人は納骨までしっかりとお勤めを果たすことが可能となります。
近年、核家族化が進んでいることもあり、親と離れて暮らす子ども世帯が多くなりました。また、グローバル化によって子ども世帯は海外に居住しているというケースもあると思います。
そうしたケースでも、成年後見人制度は有効に機能します。また、いわゆるお一人様の方も増えていることから、成年後見人制度は今後益々需要が増えてくるのではないでしょうか。
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