法定相続人とは、民法によって被相続人の財産を相続することができる権利を有する者として定められた人のことです。
法定相続人は実際に被相続人の財産を相続するか、相続放棄などによって相続しないかにかかわらず、法律で定められた被相続人の財産を相続する権利を有する者のことを指します。
今回はこの法定相続人について、さまざまな角度から見ていきたいと思います。
1:法定相続人となるのは?
法定相続人となるのは、相続開始時点において生存している(同時存在の原則)「子」「直系尊属」「兄弟姉妹」「配偶者」です。
これ以外の人はたとえ親族(6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族)であっても法定相続人とはなりません。
ただし別途遺贈を受けることはできます。もっともこれらの法定相続人の全員が相続人となるわけではなく、配偶者を除いて優先順位が定められており、「子」が第一順位、「直系尊属」第二順位、「兄弟姉妹」が第三順位となっています。配偶者に順位はなく、配偶者がいる場合は、その配偶者は他の相続人とともに必ず相続人となります。
また法定相続人となる人が、相続開始の時点で死亡・相続欠格・廃除によって相続権を失っている場合には、その法定相続人の直系卑属である子が代襲相続人となり、相続権を失った人に代わって相続することになります。
2:常に法定相続人となる配偶者
法定相続人のうち、配偶者は常に法定相続人となります。
これは相続開始後の配偶者の生活を保障すると同時に、法律上の配偶者の地位を強固に保障しようという政策によるものであると言われています。
これに対して内縁の配偶者の場合は、いかに長年にわたって日常生活を共にしてきたとしても相続することができません。内縁の配偶者に財産を残そうとすれば、遺言で遺贈する必要があります。
しかしながらそのような遺言がない場合でも、法定相続人が内縁の配偶者を追い出すことはできず、持ち家であるか借家であるかにかかわらず内縁の配偶者は相続開始も住み続けることができるとするのが判例の見解です。
つまり、内縁の配偶者は相続人としては認められませんが、生活の本拠は守ってもらえるということです。
なお、死者に法定相続人がいない場合には、内縁の配偶者には借地借家法36条で「賃借権の承継」が認められています。
3:法定相続人となる「子」
子については嫡出子に限られず、非嫡出子であっても「子」としての相続権を有します。
かつては民法において、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の半分になるという規定がありましたが、これを違憲とする最大決平成25・9・4を受けて民法が改正され、現在では非嫡出子であっても嫡出子と同等の相続分を有することになっています。
また、相続人である子が被相続人よりも先に死亡している場合などには、その子の子が代襲相続人となります。
さらに子については再代襲が認められ、孫・曾孫というように代襲相続人となります。なお相続開始の時点でまだ胎児であったという場合であっても、特別の規定により生きて生まれた場合には、相続開始の時点から相続人になるとされています。
ちなみに法定相続人となる「子」には養子も含まれますし、また普通養子に出した実子も親子関係は引き続き継続していますので、法定相続人になります。
4:法定相続人となる「直系尊属」
尊属とは、血がつながっている人(血族)のうちで、先祖に当たる人のことですが、そのうちでも、直系の人のことを「直系尊属」と言います。
父母・祖父母などが直系尊属です。相続人となるのは、直系尊属のうちで最も親等が近い人、たとえば父母と祖父母がいるとすれば父母が、祖父母と層祖父母がいるとすれば祖父母が、それぞれ相続人になるということです。
なお、優先順位としては子に続きますので、子がいる場合には直系尊属は相続人になることはありません。
5:法定相続人となる「兄弟姉妹」
兄弟姉妹は子・直系尊属に次ぐ第三順位の法定相続人でありますので、子や直系尊属がいる場合には、相続人になることはありません。
また、相続人である兄弟姉妹が被相続人より先に死亡している場合などには、その兄弟姉妹の子が代襲相続人となります。
しかしながら兄弟姉妹には再代襲は認められませんので、おい・めいは相続人になることができますが、おい・めいの子は相続人になることはできません。
6:各順位と配偶者の法定相続分
各順位の法定相続人と配偶者が相続人となる場合の法定相続分については、次の通りです。
①配偶者と子がいる場合 | 配偶者と子らがそれぞれ2分の1の法定相続分 |
②配偶者と直系尊属がいる場合 | 配偶者3分の2、直系尊属3分の1の法定相続分 |
③配偶者と兄弟姉妹がいる場合 | 配偶者4分の3、兄弟姉妹4分の1の法定相続分 |
7:遺留分が認められる「配偶者・子・直系尊属」
被相続人は遺言によって遺産分割方法を指定したり、法定相続人以外の人や団体に遺贈したり寄付したりすることができるのですが、その遺言によって配偶者・子・直系尊属が相続人になる場合に、これらの人々の生活が脅かされるリスクがあるため、民法上これらの人々の最低限の取り分として遺留分が保障されています。
そしてこれが侵害された場合には、侵害者が他の相続人であっても赤の他人であっても、遺留分の返還や損害賠償を請求したりすることが認められ、これを遺留分減殺請求権と言います。
遺留分は法定相続分の2分の1です。これをあらかじめ奪うことができないのはもちろん、法定相続人が遺留分を放棄することは原則として認められません。しかしながら兄弟姉妹には遺留分は認められません。
遺言書がない場合の相続財産の分割は、相続人となる法定相続人全員が参加し、法定相続分をよりどころとしながら、遺産分割協議書によって決めていくことになります。
また、相続には、被相続人より生前特定の相続人に対して財産が譲渡されていた場合に発生する「特別受益」や遺産の維持や増加に対する貢献度によって発生する「寄与分」といった相続人同士の公平を図る制度があります。
単に法定相続分で分割というだけでは、真の意味での公平を図ることができるわけではなく、多種多様なケースがあって相続人となる法定相続人全員が納得することはなかなか難しいことです。
遺産分割協議は相続人となる法定相続人が、自分たちだけで解決しようとすると揉める事態となりかねません。相続人となる法定相続人同士で揉めることの無いよう、相談が必要だとお思いの方は税理士紹介タックスナイトまでご相談くださいませ。相続に強い税理士をご紹介させていただきます。