相続が発生すると、専門家は異口同音に「相続財産と相続人を先ずは確定させましょう。」と唱えるものです。
相続財産を調べることが必要だということはよくわかります。借金ばっかりであれば相続したくないですし、実際にはいくら財産があるかを明らかにしなければ、もらえる分がはっきりせずに相続人同士が疑心暗鬼となり、醜い相続争いが勃発する可能性があるからです。
しかし、相続人はだいたい分かっています。配偶者と子どもというのが一般的です。子どもがいなければ親です。子どもも親もいない場合は、兄弟姉妹です。こういったことは、大体何となくよく知られているのではないでしょうか。ですので、相続人調査という名目で、なぜ戸籍を一つずつ集めるのかがよくわからないと感じられる方は少なくないようです。
今回はなぜ相続人調査が必要となるのか、確認していきたいと思います。
■他の人への証明
相続というのは狭いテリトリーで発生するものです。基本的に相続は顔をよく知る身内同士で、解決できることなのかもしれませんが、次のような例を見てみます。
相続財産は銀行にあるお金が6,000万円と、評価額が合わせて6,000万円の自宅不動産(土地と家屋)があり、配偶者は既に亡くなっており残された家族は子どもが二人です。
この二人が、自分たちが相続人だと言って銀行へ行ってお金を引き出そうとしても、相続人だと証明できるものを持っていないの為、銀行は困ってしまいます。自宅不動産の名義を変えようとしても、相続人だと証明するものを見もしないで、法務局が勝手に所有権移転の登記をすることはできないのです。
このように、相続人は誰なのかを公的に証明する必要性が非常に高いのです。そのために、相続人調査は必要な作業となります。
■相続人調査は戸籍を集めること
亡くなられた方の戸籍を、生まれた時から亡くなった時までの分を全部集めます。
実際には亡くなられた戸籍(除籍謄本)から一つずつ遡っていきます。本籍を変更したことがなければ、直ぐに集められますが、途中で本籍を変えていると、それを一つずつ全部集めます。
子どもがいたが、既に故人よりも先に亡くなられている場合には、その亡くなられた子どもの出生から死亡までの連続した全ての戸籍を集めます。子どもが生存されている場合は、現在の戸籍謄本で大丈夫です。子どもがいなくて、両親または祖父母の誰かが生存されている場合は、既に亡くなられた父母または祖父母の死亡記載の戸籍謄本(除籍謄本)を集めます。
子どもがいなくて、両親も祖父母も亡くなられている場合は、両親の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要となります。故人より先に亡くなられている兄弟姉妹がいる場合は、その方の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要です。生存されている兄弟姉妹の方は、現在の戸籍謄本を用意します。
このように、出生から死亡までの戸籍を集めることで、最終的に相続人が誰であり、他にはいないということが浮き彫りにされるのです。
場合によっては、養子に出された被相続人(故人)の兄弟姉妹が見つかることもあります。認知された異母兄弟姉妹が見つかることもあります。それでも、しっかりと戸籍を集めることでしか、銀行や法務局等を納得させることはできないのです。集めた戸籍を基にして、相続関係説明図も用意しておきましょう。そうすれば、被相続人と相続人の関係が非常によく分かります。
■遺産分割協議を終えてから新たな相続人が登場
遺産分割協議がスムーズに進むというのは、なかなかない話です。相続人だけが集まって話し合いをし、遺産分割がまとまったかのように思えても、翌日にはもめ始めるということは珍しいことではありません。「よく考えたら…、やっぱり…」「家内と相談したが、やっぱり…」という台詞はよく出るようです。
遺産分割協議がやっとまとまったと思ったら、今度は「私は相続人のはずです」と知らない人が登場するということもあります。
相続人調査を怠ると、こうした場面が現実になってしまうかもしれません。また一から遺産分割協議をやり直すはめになります。遺産分割協議は、相続人全員が行うものですので、一人欠けていても無効となります。
相続人調査をしっかりと行わないと、遺産分割協議が無効となってしまいます。更に、相続人であることを証明できる資料無しには、誰も相続人と認めてはくれません。相続人と認めてもらうために、相続人調査、すなわち戸籍収集を漏れなく行うこと必要があります。
相続のことでお悩みをお持ちの方は、税理士紹介タックスナイトまでご相談ください。相続に強い税理士をご紹介させていただきます。