相続に当たって遺言をすることが注目され、書店ではエンディングノートなどの遺言を作成するにあたってのツールが広く販売されています。しかしながら、相続と遺言の関係やその注意点はなかなか知られてないようです。
今回は、相続と遺言の関係および遺言の注意点などを概説していきます。
遺言と相続
(ア)相続とは
相続とは被相続人(亡くなった人)の財産を民法が定める相続人(たとえば、配偶者。・子ども)に対し相続開始時に法定の割合で「自動的に」移転する法律的な事象のことをいいます。
相続の対象は、不動産や預貯金などの積極財産のみならず借金などの消極財産も相続人に承継されます。つまり、被相続人が何も決めないままに相続が開始すれば、「自動的に」法の定める相続人に、法の定める割合(たとえば、配偶者:2分の1、子ども:子どもの数×2分の1)で被相続人の財産が移転することになります。
(イ)遺言とは
上記(ア)のとおり、相続がこのような性質である以上、被相続人としては、家族の状況または事業上の状況からして好ましくない状況が生じる可能性あります。たとえば、被相続人が同族会社の社長で株式の過半数を取得しているとします、そして、長男を後継者として会社を任せたいと考えている場合に、被相続人の所有する株式が、相続により妻に2分の1、次男に4分の1、そして長男に4分の1の割合で移転したとしたら、妻や次男の株式数が長男の経営にかなり影響力を持ち、被相続人が望んだ長男による経営が達せられるといえるのでしょうか。
このような場合に、被相続人の意思を亡くなった後も反映させるために、遺言制度があるのです。
被相続人が生前に遺言をしておくと、基本的には、その相続財産は、遺言書で記載されたとおり配分されることになります。ただし、遺言が効力を生じる(=財産の分配の効果が生じる)のは、相続開始時点(=被相続人が亡くなった時点)ですので、遺言の効力が生じるときには被相続人はいません。そこで、遺言には厳格な形式上の要件が民法により定められているのです。
以上のとおり、遺言とは、被相続人の財産をその意思を相続開始後にも反映させるための要式行為といえます。
(ウ)相続と遺言の関係
相続が法律の定める相続人に法律の定める割合で自動的に被相続人の財産を配分することであるとすると、遺言は、これを一定の要件のもとで修正・訂正する制度であるといえます。このような相続と遺言の関係からすると、遺言をする場合には、まず法の定める相続人・相続分によって、どのように自らの財産が配分されることになるのかを確認する必要があります。
相続で遺言を検討されている方は、専門家と相談を行いながら進めることをおすすめします。相談を希望の方は、税理士紹介タックスナイトまでお問い合わせください。相続に強い税理士をご紹介させていただきます。