2020年度税制改正について―暮らしはどう変わるー

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少子高齢が進む日本が直面する課題は多々あります。
特に2020年の税制改正大綱では、持続的な経済成長を促すための内容が注目されました。7年連続で過去最高となった大企業の内部留保の資金をいかに市場に流すか。ベンチャー企業や5Gへの投資で減税となる税制が創設されました。また、人生100年時代を見据えた、老後資産づくりへの支援ともいうべき家計に影響する内容が盛り込まれました。

一方、富裕層へは課税強化が見られます。5000万円超の海外資産を持つ富裕層の資産把握が強化されました。背景は、富裕層の所得税の申告漏れの増加にあります。2018事務年度の申告漏れ所得の総額は763億円、追徴税額は203億円で、統計を取り始めた2009事務年度以降で最も多かったようです。とりわけ海外資産が申告漏れの4割を占めているとのこと。租税回避地といわれるタックスヘイブンも一時話題になりました。今後も実態把握については強化されるものと思われます。

また、2020年分より所得税の基礎控除が38万円から48万円に引き上げられます。ここだけ見れば減税ですが、賃貸住宅オーナーなど個人事業主の場合、所得が2,400万円を超えると基礎控除は32万円に、2,450万円を超えたら16万円に、2,500万円を超えたら基礎控除なし、となり増税となります。富裕層への課税強化は今後も注意が必要です。

給与所得控除額は、被雇用者に対して適用されるもので、所得税の計算において最初に収入金額(年収)から差し引かれます。この控除の額が、2020年度より一律10万円引き下げられることになりました。
また、控除の要件である「給与等の収入金額」の上限が、現行の「年収1,000万円」から「年収850万円」となります。同時に、給与所得控除の上限額も現行の220万円から195万円と変更されるため、年収850万円を超えると10万円以上の引き下げ額になります。

こうした要件設定がなされたことにより、合計所得金額が2,500万円(年収2,695万円)以下の場合、新たに「給与所得者の基礎控除申告書」の提出義務が発生します。

国税庁が2017年の調査によると、2017年12月31日時点で1年を通じて勤務した給与所得者4,945 万人のうち、合計所得金額2,500万円(年収2,695万円)を超える人はたった0.3%しかいません。したがって、ほぼ全ての給与所得者が「給与所得者の基礎控除申告書」を提出しなければいけないことなります。
年収850万円を超えると所得税が増税となることを受け、介護や子育て世代の負担が増えないよう、新しく「所得金額調整控除」という控除が創設されることになりました。これは、給与所得控除の引き下げが行われると同時に適用されます。対象者は、年収が850万円を超え、かつ、以下3つの条件のいずれかに該当する従業員となります。
(イ)本人が特別障害者である場合
(ロ)23歳未満の扶養親族がいる場合
(ハ)特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる場合

また、控除額の算出には、以下の計算式を用います。ただし、年収1,000万円を超え合は、「給与等の収入金額(年収)」は一律1,000万円で計算します。

控除額 = { 給与等の収入金額(年収)― 850万円 }× 10%

年末調整でこの適用を受ける場合、別途「所得税額調整控除申告書」の提出が必要になります。
さらに、青色申告特別控除65万円も電子申告または電子帳簿を採用しないと、55万円に減額されます。電子申告は以前より簡便化が進んでいますので、チャレンジしてみてもよいでしょう。

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